松本城(まつもとじょう)は、長野県松本市に位置する国宝指定の名城で、その凛とした黒い姿から「烏城(からすじょう)」とも称されます。現存天守のひとつとして、戦国から江戸へ移り変わる時代の空気を今に伝えてくれる存在です。晴れた日には天守の背後に北アルプスがくっきり浮かび上がり、城と山並みが同じ画面に収まる景色は、何度見ても息をのみます。初めて訪れたとき、堀の水面に映る逆さ天守があまりにきれいで、しばらく言葉が出ませんでした。
本記事では、松本城の歴史を押さえつつ、現地で「ここは外せない」と感じた見どころ、さらに混雑を避けるコツや周辺の立ち寄りスポットまで、旅の計画に役立つ情報をまとめます。
松本城の歴史
松本城の歴史は戦国時代に遡ります。最初の築城は1504年頃、信濃守護の小笠原氏が築いたとされる「深志城(ふかしじょう)」が起源です。その後、1582年の天正壬午の乱などを経て城主が移り変わり、城は「松本城」と呼ばれるようになりました。戦国の動乱のなかで要衝として整えられていった背景を知ると、城下町の中心に天守がどっしり構えている理由が腑に落ちます。
現在の姿の核となる大天守や渡櫓(わたりやぐら)は、16世紀末に石川数正・康長父子によって築かれたとされ、のちに江戸時代初めに月見櫓などが付け加えられました。明治の廃城令で取り壊しの危機に直面したものの、市民の保存運動によって守り抜かれ、修理を重ねながら現存天守として受け継がれています。「残った」のではなく、「残した」。この事実が、松本城をいっそう特別な場所にしていると感じます。
松本城の見どころ
構造
松本城は平地に築かれた「平城(ひらじろ)」で、堀・土塁・石垣などの防御が重層的に組み合わされています。山城のような険しさはない一方、平地だからこそ水堀を生かした防備が発達したのが特徴です。外周を歩くだけでも、門の位置や曲がり角の多さなど、攻めにくく守りやすい工夫が随所に見えてきます。
天守閣
松本城の天守は五重六階の構造を持ち、現存する天守のなかでも古い形式を伝える「最古級」として知られます。黒漆塗りの下見板が生む重厚感は、近くで見るほど迫力が増し、晴天の日は黒がより締まって見えるのが印象的です。天守内は階段が急で段差も大きく、まさに「実戦を意識した城」の空気があります。個人的には、足元が安定する靴で行くのが正解だと思いました。
最上階近くまで上がると、窓から北アルプスや松本の街並みが広がります。天候に恵まれた日は山並みの稜線がくっきり出て、城の中にいながら「山の町・松本」を実感できる瞬間です。景色を見たあとで外に出て天守を見上げると、「あの高さまで登ったんだな」と小さな達成感も味わえます。
内部の展示
天守内部は公開されており、武具や刀剣、甲冑などの展示を通して、戦国から江戸にかけての歴史を学べます。展示を眺めながら歩いていると、単なる「美しい建物」ではなく、暮らしや政治、防衛の拠点だったことが自然と伝わってきます。狭い通路や梁の太さに目を向けると、当時の建築技術の確かさにも驚かされます。
月見櫓
天守に隣接する「月見櫓(つきみやぐら)」は、江戸時代に増築された建物で、その名の通り月見を楽しむための場所でした。戦闘向けの天守とは趣が異なり、窓の設えや空間の雰囲気に「泰平の世」の余裕が感じられます。同じ敷地内で、戦うための城と、楽しむための空間が同居しているのが松本城らしい面白さです。
堀と石垣
天守を囲む堀は水をたたえ、季節によっては水鏡のように天守を映します。白鳥や鯉が泳ぐのどかな風景が広がる一方、石垣の積み方や水堀の幅を見ていると、やはり防御のための「仕掛け」でもあることがわかります。私が特に好きなのは、朝の光が斜めに差し込む時間帯。堀の周りが静かで、写真を撮っても人が写り込みにくく、落ち着いて城と向き合えました。
四季折々の松本城
松本城は一年を通じてさまざまな表情を見せます。訪れる季節で印象ががらりと変わるので、リピーターが多いのも納得です。
- 春: 桜が満開となり、城と桜の王道の組み合わせが楽しめます。夕方から夜にかけてのライトアップは、黒い天守がよりドラマチックに見えておすすめです。
- 夏: 青空と緑に囲まれる松本城は爽やかで、外周の散策が心地よい季節です。日差しが強い日は堀沿いに影ができるので、休みながら回ると無理がありません。
- 秋: 紅葉が城を彩り、落ち着いた色合いの景色のなかで歴史情緒が増します。空気が澄む日が多く、山並みもきれいに見えやすい印象です。
- 冬: 雪化粧をまとった松本城は、黒と白のコントラストが際立つ荘厳な姿となります。凛とした寒さのなかで見る天守は、思わず背筋が伸びる美しさです。
写真を撮るならここ
写真目的で訪れるなら、まずは堀越しに天守を正面気味に捉えられるポイントを探してみてください。水面が落ち着いている日は、逆さ天守が狙えます。次におすすめなのが、少し角度を変えて「黒い天守と白い漆喰、そして石垣」を立体的に見せる構図。肉眼で見た迫力が写真に残りやすく、旅の記憶がぐっと鮮明になります。
松本城周辺の観光スポット
松本城の周辺には、歴史や文化を楽しめるスポットが多数あります。私は「城を見たあとに街を歩く」流れが好きで、城の余韻を保ったまま、城下町らしい路地へ自然に気持ちがつながっていきます。
- 松本市立博物館: 城下町松本の歴史や暮らしに触れられるスポット。城を見た直後に行くと理解が深まります。
- 縄手通り: 江戸時代の面影を残す通りで、土産物店や飲食店が並びます。散策の締めに食べ歩きをするのも楽しいです。
- 旧開智学校: 日本最古級の擬洋風建築として知られる学校建築。和の城を見たあとに洋の建築を巡ると、時代の振れ幅が面白く感じられます。
- アルプス公園: 北アルプスを望む広大な公園で、家族連れに人気。天気のよい日は「松本は山が近い町だ」と実感できます。
アクセス・入館情報
訪問当日の動きがスムーズになるよう、基本情報をまとめます。季節やイベントで変動する場合があるため、旅程が決まったら最新の案内もあわせて確認しておくと安心です。
- 所在地: 長野県松本市丸の内4-1
- アクセス:
- JR松本駅から徒歩約15分。街歩きを楽しみながら向かえる距離感です。
- 松本ICから車で約20分(道路状況により前後します)。
- 営業時間: 通常8:30~17:00(最終入場16:30)。繁忙期や季節により延長・短縮があります。
- 休場日: 年末(12月29日~12月31日)。
- 観覧料: 2025年4月以降、一般は電子チケット1,200円、紙チケット1,300円、小・中学生400円。小学生未満は無料です。
- 観覧の目安: 天守内は平均45~60分ほど。混雑日には入場制限が行われることもあるため、時間に余裕を持つのがおすすめです。
より楽しむためのコツ
松本城は見どころが多いぶん、少しだけ準備しておくと満足度が上がります。
- 混雑を避けるなら朝: 開場直後は比較的歩きやすく、堀の水面も落ち着いていることが多い印象です。
- 足元は歩きやすく: 天守内の階段は急で段差も大きめ。スニーカーなど滑りにくい靴が安心です。
- 外周散策もセットで: 天守だけで終わらせず、堀沿いを一周すると「城の守り」の工夫が見えてきます。私はこの散策で、城の理解が一段深まりました。
まとめ
松本城は、戦国時代から続く日本の歴史と文化を今に伝える国宝です。黒を基調とした天守の美しさ、堀と石垣がつくる城郭の風景、そして北アルプスを背負う松本ならではのロケーションが一体となり、「ここでしか見られない景色」をつくり上げています。実際に歩いてみると、写真で見た以上に迫力があり、同時にどこか品のある佇まいに心が落ち着きました。
歴史を学びながら巡るのはもちろん、季節の景色を楽しむ旅にもぴったりです。松本の城下町歩きと組み合わせて、松本城の魅力をまるごと味わってみてください。