栗林公園の歴史と見どころ

栗林公園 香川

栗林公園(りつりんこうえん)は、香川県高松市にある大名庭園です。紫雲山を借景にした「築山池泉式」の景観が見事で、国の特別名勝にも指定されています。園内を歩くと、池の水面に松の枝ぶりが映り込み、視線の先で築山がふっと立ち上がる——その一つひとつが計算されているのに、全体は驚くほど自然。高松の街なかにいることを忘れる静けさがあり、私にとっては「心の歩幅がゆっくりになる庭」でした。

また栗林公園は、文化財庭園として国内最大級の広さを持つことでも知られています。歩くコースによって表情が変わるので、短時間でも満足できますし、時間があるほど“じわじわ良さが染みる”タイプの名園でもあります。

栗林公園歴史

栗林公園の歴史は、江戸時代より前にもさかのぼります。現在の庭園づくりの土台になったのは、1631年頃の治水工事で生まれた水辺環境とされ、その後、1642年に高松に入った初代高松藩主・松平頼重(まつだいらよりしげ)の時代から本格的な造園が進みました。歴代藩主の手で拡大と修築が重ねられ、1745年に5代藩主・頼恭(よりたか)の時代に大名庭園としての形が整ったと伝わります。

明治に入ると、1875年に県立公園として一般に公開され、戦後の1953年には「特別名勝」に指定されました。個人的には、この流れを知ってから園内を歩くと、ただ美しいだけでなく「時代の変化をくぐり抜けて残った庭なんだ」と感じられて、風景の重みが増すように思います。

栗林公園は、南庭と北庭に大きく分かれています。南庭は江戸時代の回遊式大名庭園としての完成度が高く、北庭は鴨場としての歴史も持ちながら、近代に整備が進んだエリアです。歩いていると空気感がふっと変わる瞬間があり、「同じ庭園の中に、異なる時代のレイヤーが重なっている」ことを体で理解できるのが面白いところです。

栗林公園の見どころ

園内の特徴と魅力

栗林公園の魅力は、「歩いて完成する景色」が多いことです。少し角度が変わるだけで、松の枝ぶりが絵の額縁のように景色を切り取り、池と築山と借景が一枚の絵になります。私が初めて訪れたときは、写真を撮る手が止まらないのに、いざ見返すと“本当の良さ”は写真に写りきっていなくて、ちょっと悔しくなりました。だからこそ、スマホをしまって数分だけでも「ただ眺める時間」を作るのがおすすめです。

池泉

園内の池泉は、庭園の中心として景色をまとめる存在です。水面が静かな日は、松の緑と空の色がくっきり映り込み、まるで“もう一つの庭”が下に広がっているように見えます。風が立つ日はさざ波が絵筆のように水面を撫でて、同じ場所でも表情が変わります。訪れる季節だけでなく、その日の天気でも印象が変わるのが栗林公園らしさだと感じます。

築山(つきやま)

築山は、園内の“奥行き”を作る重要な要素です。平坦に見える場所でも、視線の先に築山が入ることで風景が締まり、歩みを進めたくなります。少し高い場所に上がると、池と松、そして借景の紫雲山が重なって見え、「この庭は山まで含めて設計されているんだ」と納得できます。

松の木

栗林公園といえば松。園内には手入れの行き届いた松が多く、枝ぶりの美しさそのものが見どころになります。中でも「鶴亀松」「箱松」「根上り五葉松」など、造形としての迫力がある松は必見です。私の好みは、派手に目立つ松よりも、池の縁でさりげなく枝を伸ばしている松。風景の“余白”を作ってくれる感じがして、見つけるたびに嬉しくなります。

茶室と庭園

園内には「掬月亭(きくげつてい)」をはじめ、茶の文化に触れられる場所があります。歩き疲れた頃に座って庭を眺めると、さっきまで“観光”だった景色が、急に“自分の時間”に変わる感覚がありました。庭園は歩いて楽しむものと思いがちですが、栗林公園は「座って完成する景色」も強いです。時間に余裕があるなら、あえて休憩の時間を最初から予定に入れておくと満足度が上がります。

和船(わぶね)で眺める南湖

もう一段、没入感を上げたいなら和船もおすすめです。南湖を一周するコースで、船頭さんの解説を聞きながら約30分、歩いていたときとは違う目線で庭を楽しめます。水面に近い分、松の枝が頭上に迫ってきたり、石組みの迫力が増して見えたりして、「同じ庭なのに別世界」と感じる瞬間があります。私が乗った日は、舟がすっと影に入ったときに気温が少し下がって、風の匂いまで変わったのが印象的でした。

四季折々の景色

春は桜、夏は深い緑、秋は紅葉、冬は凛とした空気感。季節ごとに見たい景色がありますが、個人的におすすめしたいのは「新緑の時期」と「雨上がり」。新緑は光の透け方がきれいで、庭全体がみずみずしく見えます。雨上がりは、石畳がしっとりして色が濃くなり、苔や木肌の質感がぐっと立ち上がります。晴れの日の王道の美しさとは別の、“静かな贅沢”を味わえるタイミングです。

栗林公園の文化的価値

栗林公園は、江戸期の大名庭園の技術と美学を今に伝える貴重な場所です。石組みや植栽の配置、池泉と築山のバランス、そして借景の使い方など、「庭園をどう“見せるか”」の工夫が随所にあります。歩いていると、自然に見える景色ほど人の手が入っていることに気づき、庭園という文化の奥深さを実感します。

また、栗林公園は国外の旅行ガイドでも高く評価されることがあり、日本庭園の魅力を知る入口としても優れています。ただ、情報として知っているだけではもったいなくて、実際に現地で「音の少なさ」や「風の通り方」まで含めて体験すると、評価の理由が腑に落ちます。

アクセス

栗林公園は高松市中心部からのアクセスが良く、電車・バス・車のいずれでも訪れやすい立地です。徒歩ならJR栗林公園北口駅から約3分、ことでん栗林公園駅から約7分ほど。JR高松駅からはタクシーで約7分が目安です。初めての方は、時間に余裕を見て到着し、入口付近で園内マップを確認してから歩き始めると、見落としが減ります。

短時間でも満足する回り方のコツ

「滞在60〜90分くらい」という場合は、見たいポイントを先に決めるのがコツです。例えば、南庭の主要スポットを中心に回って景色を楽しみ、余裕があれば掬月亭で一服、さらに時間が取れるなら和船で締める、という流れだと満足度が高いです。逆に、写真をしっかり撮りたい方は、同じ場所を時間帯を変えて見返すと、光の入り方が変わって面白いです。

まとめ

栗林公園は、歴史の積み重ねの上に、いまも“生きた景色”が息づく日本庭園です。歩いて、眺めて、座って、そして可能なら舟にも乗ってみる。そうやって過ごすほどに、庭の見え方が深くなっていきます。観光としての満足感はもちろん、「自分の気持ちが整う場所」を探している人にも、そっとおすすめしたくなる名園です。

error:
タイトルとURLをコピーしました