彦根城(ひこねじょう)は、滋賀県彦根市にある近世城郭で、国宝に指定されている天守を持つ名城です。琵琶湖の東側、城下町の中心にどんと構える姿は凛としていて、初めて訪れたときは「こんな場所に、江戸の空気がそのまま残っているんだ」と背筋が伸びました。天守をはじめ多くの建物が重要文化財に指定され、現存する天守(いわゆる現存天守)のひとつとしても知られています。城内の石垣や堀、曲線の美しい屋根の重なりを眺めていると、ただ“古い建物”を見るのではなく、時代の技術と美意識に触れる旅になるのが彦根城の魅力です。
彦根城の歴史と築城
関ヶ原の戦いののち、徳川家康の重臣として知られる井伊直政(いい なおまさ)がこの地を治めることになり、井伊家の拠点として城づくりが進められました。もともと一帯には佐和山城がありましたが、より城下町を整えやすい場所として、現在の彦根城が立つ金亀山(こんきやま)に新たな城が築かれていきます。築城は江戸時代初期に始まり、井伊家の代を重ねながら整備が進められ、現在の姿へとまとまっていきました。
彦根城を歩いていて印象的なのは、「平和な時代の城」と一言で片づけられない緊張感が残っていることです。城門の配置、曲がりくねった動線、石垣の高さや角度など、実際に歩くほどに“攻めにくさ”が体感として伝わってきます。一方で、天守の端正な輪郭や白壁の清潔感、城下を見渡す眺めには、武威だけではない「見せる城」としての美意識も感じられて、同じ場所にいるのに心がきゅっと引き締まったり、ふっと緩んだりするのが面白いところです。
彦根城の見どころ
国宝天守の美しさと、登ってわかる“実戦感”
彦根城最大の見どころは、やはり国宝の彦根城天守です。外観は三重三階の落ち着いた姿で、屋根の重なりや破風(はふ)の表情が上品。派手さで圧倒するというより、近づくほどに細部の美しさが増していくタイプの天守だと感じます。白漆喰の壁と黒い屋根のコントラストがきれいで、季節の光によって表情が変わるのも見逃せません。
実際に中へ入ると、いきなり“城は生活空間であり、防御施設でもある”ことを思い知らされます。階段は急で段差も大きく、手すりにつかまりながら一段ずつ上がる感覚は、ちょっとした冒険です。木のきしむ音、暗がりの匂い、窓から差し込む光の細さまで含めて、現代の建物にはないリアルさがあります。最上階に着いた瞬間、視界がぱっと開けて城下と琵琶湖方面の眺めが広がるのですが、その爽快感は「頑張って登ってよかった」と素直に思えるご褒美でした。
天秤櫓や太鼓門櫓など、写真に残したくなる城郭パーツ
天守だけを見て帰るのは、正直もったいないです。彦根城は櫓や城門も見応えがあり、なかでも天秤櫓(てんびんやぐら)は「彦根城らしさ」を象徴する存在。左右に伸びる廊下橋と櫓の形が天秤のように見え、立ち位置を変えるたびに構図が変わるので、つい何枚も撮ってしまいます。
さらに、登城口まわりの太鼓門櫓(たいこもんやぐら)や城門の重厚さ、石垣の折れや積み方にも注目すると、彦根城が「見た目の美しさ」と「守りの工夫」を両立させた城だと実感できます。個人的には、石垣を見上げたときの圧が好きで、角の反りや高さを眺めているだけで時間が溶けました。
玄宮園で一息。城の“もうひとつの顔”を味わう
歩き疲れたら、城の北側にある玄宮園(げんきゅうえん)へ。池泉回遊式庭園で、水面に映る天守がとてもきれいです。天守を「見上げる」だけでなく、「借景として愛でる」という体験ができるのがこの庭園の良さで、同じ彦根城でも印象ががらっと変わります。ベンチに座ってぼんやり眺めていると、観光のテンポが一段落ちて、旅の記憶が体に染みていく感じがしました。
彦根城周辺の観光スポット
彦根城の楽しみは城内だけにとどまりません。城下町の雰囲気が歩ける距離にまとまっているので、「城+町歩き」で満足度が一気に上がります。
- 彦根城博物館 井伊家に関する資料や武具、城下の文化を伝える展示が充実しています。建物の落ち着いた空気も相まって、城を見たあとに訪れると理解が深まりやすい印象でした。
- 夢京橋キャッスルロード 白壁風の町並みにお店が並ぶ散策エリア。食べ歩きもしやすく、私は近江牛系の軽食につい手が伸びました。城の余韻のまま歩ける距離感がちょうどいいです。
- ひこにゃんに会える日も タイミングが合えば、彦根の人気キャラクターひこにゃんの登場に出会えることもあります。旅先でふいに“イベント感”が増すので、家族連れや初めての彦根観光にもおすすめです(登場スケジュールは日によって変わるため事前確認が安心です)。
彦根城と文化財としての価値
彦根城は天守が国宝に指定され、さらに櫓や城門など多くの建造物が重要文化財として守られています。「現存天守」として今に残っていること自体が貴重で、建て替えではない“当時の材や構造”に触れられるのは大きな価値です。天守内部の木組みや柱の太さを見ていると、歴史は教科書の外にあるんだと実感します。
また、彦根城は四季の景色がよく似合います。春は桜、秋は紅葉、冬は空気が澄んで眺望がきれい。私は秋の午後に訪れたのですが、光が傾くほど白壁がやわらかく見えて、写真の中の城が少しだけ“優しい顔”になるのが印象的でした。
観光のコツと所要時間の目安
彦根城は見どころが点在しているので、時間配分が満足度を左右します。天守までの道は坂や階段があり、天守内も急な階段が続くため、歩きやすい靴が本当に大事です。所要時間は、天守中心なら約60分〜90分、玄宮園や博物館、町歩きまで含めるなら約2時間〜3時間あると安心でした。開場時間や入場料、ひこにゃんの登場などは季節や日程で変わることがあるので、出発前に公式情報を確認しておくと旅がスムーズです。
まとめ
彦根城は、国宝天守を中心に、櫓や城門、石垣、庭園、城下町まで「ひとつの物語」として味わえる場所です。天守に登って息を切らしながら見た城下の景色も、玄宮園で水面に映る天守を眺めた静かな時間も、どちらも同じ彦根城なのに全く違う記憶として残りました。歴史が好きな人はもちろん、「日本の城は難しそう」と感じている人にこそ、歩いて・登って・休んで楽しめる彦根城をおすすめしたいです。城を見終えたあと、ふと振り返ってもう一度天守を眺めたくなる。そんな余韻が、ここにはあります。