宮島・厳島神社の歴史と見どころ

厳島神社 広島

宮島(みやじま)にある厳島神社(いつくしまじんじゃ)は、広島県廿日市市に位置する日本を代表する観光名所であり、世界遺産にも登録されています。古くから「神々が宿る島」として知られる宮島は、日本三景の一つとしても名高く、美しい景観と深い歴史を併せ持つ場所です。その中心にある厳島神社は、海上に建つ独特の神社建築が特徴で、多くの人々が訪れるパワースポットとなっています。

私がこの場所に惹かれるのは、「建物が美しい」だけで終わらないところです。潮の満ち引き、山の稜線、朱の回廊、そして遠くの島影までが一枚の絵のようにつながり、歩くほどに景色が変わっていきます。写真で見たはずなのに、実際に立った瞬間に息をのむ――厳島神社は、そんな“体験型の絶景”だと思っています。

厳島神社の歴史と文化

神社の創建:伝説と初期の歴史

神社創建の伝説

  • 厳島神社の創建には、古代の神話や伝説が深く関わっています。最も広く伝わっているのは、「宗像三女神(むなかたさんじょしん)」を祀るために創建されたという伝説です。宗像三女神は、海の神々であり、海上の守護神として信仰されてきました。厳島は、これらの神々を祀る場所として選ばれたと伝えられています。
  • 一説によると、厳島神社は6世紀に創建されたとされ、特に推古天皇(592年 – 628年)や聖徳太子の時代に関わる伝承もあります。この神社が最初に建立された目的は、海上交通の安全や漁業の繁栄を願うものであったと考えられています。

「海の上に社殿を建てる」という発想自体が、いまの感覚だと少し不思議に思えるかもしれません。でも私は、この“海と一体の聖域”という考え方にこそ、厳島らしさがあると感じます。島そのものを神域として敬い、むやみに踏み荒らさないための知恵が、建築のかたちに表れているようにも見えるのです。

初期の神社と平安時代の発展

  • 厳島神社の創建がいつか明確には分かっていませんが、平安時代にはその存在が広く知られるようになり、特に10世紀には、神社の存在が文献にも記されるようになります。この時期、宮島一帯は、海上交通の要所として栄えていました。
  • その後、平安時代中期になると、平家一門が厳島神社の守護神としての役割を強調し、神社を大きく整備します。この頃から、厳島神社はその規模を拡大し、神殿も美しく壮麗なものとなっていきました。

平家の時代と厳島神社の繁栄

平家の庇護と建設の発展

  • 平家一門、特に平清盛の影響を受けて、厳島神社は大きな発展を遂げます。平清盛(1118年 – 1181年)は、厳島神社を非常に大切にし、宮島と神社に多大な支援をしました。彼の庇護のもと、厳島神社は今のような豪華な神殿や参道、舞台などの建設が行われました。
  • 特に、平清盛が神社を整備した際に、現存する厳島神社のシンボルである大鳥居が設置され、これが厳島神社の象徴となりました。この大鳥居は、干潮時には陸続きに見え、満潮時には海に浮かぶように見えるため、厳島神社を象徴する美しい風景を作り出しています。

平清盛の時代の物語は、歴史好きの人ほど胸が高鳴るところだと思います。瀬戸内の海上交通を押さえることは、政治にも経済にも直結していました。その結節点にある厳島へ力を注いだことは、信仰だけでなく、時代の“潮目”を読んだ選択だったのだろう――そんなふうに想像すると、回廊を歩く時間がぐっと濃くなります。

平家の栄光と衰退

  • 平清盛が行った神社の整備と発展により、厳島神社は大きな繁栄を迎えます。清盛の死後、平家は源氏による討伐を受けて滅亡しますが、平家の栄光を象徴するこの神社は、平家一門の遺産としてその後も地域にとって重要な存在であり続けました。

戦国時代と江戸時代:試練と復興

戦国時代の混乱と神社の荒廃

  • 戦国時代に入ると、厳島神社もまた戦乱の影響を受けました。特に、戦国大名たちが互いに領地を争っていた時期、宮島や厳島神社も何度か荒廃しました。
  • その後、江戸時代に入ると、徳川家による平和な時代が訪れ、厳島神社の復興が行われました。この時期に、再びその美しい神殿や建築が整備され、観光名所としての地位も高まりました。

江戸時代の再建と発展

  • 江戸時代の初めには、神社の修復が進み、特に「大鳥居」が再建されるなど、神社の壮麗な姿が復活しました。この時期、厳島神社は再び日本を代表する神社として、宗教的な重要性を保ち続けることとなります。

厳島神社は、華やかな時代だけでなく、試練の時代もくぐり抜けてきました。私の考えとしては、この“守られてきた時間”そのものが見どころです。何百年も前の人々が見上げた朱や海の色を、いま自分も同じ場所で眺められる。そう思うと、旅先で感じる静けさが少し特別に思えてきます。

近代と現代:保存活動と世界遺産登録

近代の修復と保存活動

  • 明治時代以降、厳島神社は多くの歴史的変遷を経ました。特に、第二次世界大戦の影響を受け、戦後の復興期には、神社の保存と保護活動が行われました。この時期、宮島の景観を守るための取り組みがなされ、厳島神社はその文化的価値を保つために修復が行われました。

世界遺産登録と国際的評価

  • 1996年、厳島神社は「厳島(宮島)」の文化的景観とともに、ユネスコの世界遺産に登録されました。この登録は、厳島神社の建築美や自然との調和、そしてその歴史的価値を世界が認めた証となりました。
  • 現代では、世界中から観光客が訪れ、厳島神社は宗教的な聖地としてだけでなく、日本の文化や歴史を象徴する重要な場所としても知られています。

世界遺産として注目される一方で、ここは“生きた信仰の場”でもあります。観光地としての便利さと、祈りの場としての厳かさが同居しているのが厳島の魅力で、私はそのバランスを大切にしたいと思います。回廊を歩くときは少し歩幅を小さくして、音や風を感じる余裕を残す。そんな気持ちで巡ると、景色の印象がやわらかく変わってきます。

見どころ

スポット

海上に浮かぶ大鳥居

厳島神社を象徴する朱塗りの大鳥居は、潮の満ち引きによって異なる表情を見せます。干潮時には鳥居の下まで歩いて行くことができ、潮が満ちると海上に浮かぶように見える幻想的な風景が広がります。現在の鳥居は1875年に建てられたもので、高さ約16メートルの巨木を使用しています。この鳥居は「厳島神社とその周辺の風景」を形作る重要な要素となっています。

私のおすすめは、あえて同じ場所を時間をずらして2回見ることです。昼の明るさで朱の発色を楽しんだあと、夕方の斜光で鳥居の陰影が深くなる瞬間を狙う。満潮・干潮だけでなく、光の角度でも表情が変わるので、「見た」から「感じた」に変わるきっかけになります。

回廊と社殿

厳島神社の社殿は、寝殿造を基調とした建築で、朱塗りの回廊が海上を巡るように配置されています。この回廊は、潮の干満によってその姿を変える海と一体となった設計が特徴で、訪れる人々を魅了します。社殿内には本殿、平舞台、高舞台などがあり、それぞれの建築が神事や祭礼のための重要な役割を果たしています。

回廊を歩くときは、ぜひ床板の感触にも意識を向けてみてください。視線はどうしても海や鳥居に引っ張られますが、足元の木の温度や軋みが“建物の呼吸”のように感じられることがあります。建築を鑑賞するというより、空間に包まれる体験に近い――私はそんな印象を持っています。

能舞台

厳島神社の能舞台は、現存する海上能舞台の中でも特に珍しいものです。ここでは神事に合わせた能が奉納されることがあり、伝統的な日本文化の美を体感できます。

能舞台は“何かが起こる場所”というより、“何も起こらない時間が美しい場所”だと思います。舞台の先に広がる海を眺めていると、現代の旅先では得がたい静寂がふっと戻ってくる。混雑日でも、ここだけ空気が少し落ち着く瞬間があるのが不思議です。

宮島の自然と文化的魅力

弥山(みせん)

宮島の中央にそびえる弥山は、標高535メートルの山で、島全体を見渡せる絶景スポットとして知られています。ロープウェイを利用すれば山頂付近まで簡単にアクセスでき、山頂からは瀬戸内海の絶景が広がります。弥山は自然信仰の対象でもあり、原生林が広がる神秘的なエリアとなっています。

体力に余裕があるなら、弥山はぜひ“静けさ目当て”で選んでほしい場所です。商店街のにぎわいから少し距離を置くだけで、森の匂いや風の音が増していきます。頂上からの眺めはもちろん、道中の空気が変わっていく過程そのものが、旅の記憶に残りやすいと私は思います。

島内の鹿

宮島では多くの鹿が自然に生息しています。これらの鹿は神の使いとされ、島全体の神聖さを象徴する存在です。訪問者と親しみやすく、鹿とのふれあいも宮島観光の醍醐味の一つです。

ただし、鹿はあくまで野生動物です。かわいさに気を取られて近づきすぎると、紙袋や地図などを狙われることもあります。私の考えとしては、「触れ合う」より「同じ空間にいる」くらいの距離感が一番気持ちいい。人も鹿も落ち着いて過ごせる距離を保つと、写真も自然な表情になりやすいです。

宮島の名産品とグルメ

宮島では名物のもみじ饅頭や穴子飯など、多くの地元グルメを楽しむことができます。また、牡蠣は広島を代表する特産品の一つで、新鮮な牡蠣を味わえる屋台やレストランも数多くあります。

食べ歩きは楽しい反面、つい急ぎ足になりがちです。私のおすすめは、ひとつだけ“目的の味”を決めておくこと。穴子飯なら老舗で腰を据えて、もみじ饅頭なら揚げたてや焼きたてのタイミングを狙うなど、「これだけは丁寧に味わう」と決めると、旅全体の満足度が上がります。

厳島神社の行事と祭礼

厳島神社では年間を通じてさまざまな祭礼が行われています。特に有名なのが管絃祭(かんげんさい)で、毎年7月に開催されます。この祭りでは、平安時代の雅な装束をまとった人々が、装飾された船で宮島を巡る様子が見られます。夜には灯籠が海に浮かべられ、幻想的な雰囲気が島全体を包みます。

行事の日は混雑も増えますが、そのぶん“厳島が生きている”感覚が強くなります。観光地として訪れたつもりが、ふと気づくと、地域の時間の流れに自分も混ざっている。私にとって祭礼は、歴史を読むよりも近い距離で文化に触れられる、特別な入口です。

訪れる際の注意点とおすすめの時期

厳島神社を訪れる際は、干潮と満潮のタイミングを事前に確認することをおすすめします。これにより、大鳥居を間近で見ることも、海上に浮かぶ鳥居の姿を楽しむこともできます。春や秋は気候が快適で、桜や紅葉が美しい季節でもあり、特におすすめです。また、訪問時には島の神聖さを尊重し、マナーを守ることが大切です。

潮位は日によって大きく変わるため、当日の潮汐表や現地掲示をチェックすると安心です。干潮時に鳥居の近くまで行く場合は、足元がぬかるむこともあるので、歩きやすい靴が向いています。雨の日は回廊が滑りやすくなることがあるため、焦らずゆっくり歩くのが安全です。

混雑を避けたいなら、私としては午前中の早い時間帯か、日帰り客が戻り始める夕方寄りの時間帯が狙い目だと思います。特に夕方は、海面の色が落ち着き、朱の建築が少し深い色に見えてきます。観光のにぎわいが一段落して、厳島の“静かな顔”が戻ってくる時間です。

初めてでも迷わない、宮島散策のコツ

宮島は見どころが密集しているので、計画なしでも楽しめます。ただ、私の考えとしては「潮の時間」と「山の時間」を分けるだけで満足度が大きく変わります。潮(厳島神社と大鳥居)を中心にする時間帯と、山(弥山や森)を中心にする時間帯を分けると、景色の切り替えが気持ちよく、歩き疲れもしにくいです。

  • 潮の時間:厳島神社→回廊→大鳥居(干潮なら近くまで、満潮なら遠景も楽しむ)
  • 町の時間:表参道商店街で食事・休憩(食べ歩きは“主役を一つ”決める)
  • 山の時間:弥山(ロープウェイ+散策)で自然と眺望を味わう
  • 締めの時間:夕方の海と朱をもう一度(光で表情が変わる)

また、参拝の場では撮影に夢中になりすぎないのも大切です。立ち止まる場所を少しだけずらす、通行の流れを遮らない、静かな場所では声のボリュームを落とす。小さな配慮ですが、そうした心がけがあると、旅の印象まできれいに整っていく気がします。

まとめ

宮島と厳島神社は、日本の自然美と歴史、文化が融合した特別な場所です。訪れる人々にとって、厳島神社でのひとときは心を癒し、日本の伝統を深く知る機会となるでしょう。歴史的価値や景観の美しさだけでなく、平清盛の時代から続く神聖な空気を感じることができるこの地は、一度は訪れるべき場所として多くの人々に愛されています。

そして私が最後に伝えたいのは、厳島神社は“見る場所”であると同時に、“整う場所”でもあるということです。潮の匂い、木の回廊の気配、森の静けさ。旅先で得られる刺激とは違う種類の、落ち着きがここにはあります。予定を詰め込みすぎず、少しだけ立ち止まる時間を持ってみてください。きっと、思い出の輪郭がはっきりしてくるはずです。

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