萩城下町の歴史と見どころ

萩城下町 山口

萩城下町は、山口県萩市に位置する歴史的なエリアで、江戸時代の城下町の風情を色濃く残しています。萩藩36万石を治めた毛利氏の居城であった萩城(指月城)を中心に、武家屋敷や町人の住まいが並び、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。タイムスリップしたような景観が魅力で、歴史愛好家や観光客にとって必見のスポットです。

初めて訪れる人にまず伝えたいのは、「派手さ」よりも「積み重なった時間」に心を奪われる町だということ。土塀の白、石垣の陰影、格子戸の連なり、そして季節の光がつくる柔らかなグラデーションが、歩くほどに静かに効いてきます。私自身、こういう場所では急いで名所を回るより、遠回りをしてでも路地の曲がり角を楽しみたくなります。

萩城下町の歴史

歴史的背景

萩城下町の形成は1604年(慶長9年)に毛利輝元が築いた萩城に始まります。毛利氏は関ヶ原の戦いで西軍に属して敗北し、防長二州(山口県東部)に転封されました。その後、萩に新たな本拠地を構え、城下町の建設を進めました。萩城は指月山のふもとに位置し、自然の地形を利用した堅固な城郭でした。

城下町は計画的に整備され、武士や町人、商人たちが生活するエリアが区画ごとに分けられました。現在でも碁盤の目状に整った町並みが残り、江戸時代の都市計画の名残を感じることができます。

城下町の面白さは、歴史が「展示」ではなく「生活の形」として残っているところにあります。道幅、屋敷の区割り、土塀の高さや門の構え方まで、当時の身分制度や防御の考え方がにじむ。知識として知るだけでなく、実際に歩くと「なるほど、ここは見通しが利く」「曲がり角が多い」と体感できるのが萩の強みだと感じます。

萩城下町の見どころ

スポット

武家屋敷

萩城下町の北部には上級武士の屋敷が多く残っています。その中で有名なのが「高杉晋作誕生地」や「木戸孝允旧宅」です。これらは幕末の志士たちが青春時代を過ごした場所で、当時の建築様式や庭園の美しさを今に伝えています。

武家屋敷のエリアを歩くと、まず目に入るのが白壁の土塀と、どっしりとした門構え。派手な装飾は少ないのに、凛とした存在感があります。私が好きなのは、土塀の上に伸びる木々や季節の実が、硬質な景観にやさしい表情を足してくれるところ。写真を撮るなら、正面から構えるより、少し斜めに土塀が伸びていくラインを入れると、城下町らしい奥行きが出ます。

町人地区

町人の住まいがあった地域は、白壁の土塀やなまこ壁、格子窓が並ぶ風情ある街並みが特徴です。代表的な通りとして「菊屋横丁」や「平安古町(ひやこちょう)」があり、歴史的な建物や商家が点在しています。

町人地区は、武家屋敷に比べてぐっと生活の温度が近くなる印象です。格子窓越しに見える室内の暗がり、軒先の影、石畳の足音。観光地なのに、どこか「人の暮らしにお邪魔している」感覚が残るのが心地よく、自然と声のボリュームも下がります。歩き疲れたら、路地の端で立ち止まって、風が抜ける音を聞くだけでも贅沢です。

指月公園

萩城の跡地で、現在は「指月公園」として整備されています。石垣や堀の一部が残り、春には桜が咲き誇る美しい景観を楽しむことができます。萩城は天守閣を持たない構造が特徴で、天守台からは日本海や城下町の眺望を堪能できます。

指月公園は、城下町散策の「締め」にも「始まり」にも向いています。石垣の力強さを見上げると、さっきまで歩いていた町の静けさが、単なる風情ではなく「守りの仕組み」とつながっていたのだと腑に落ちます。個人的には、天守台に立ったときの開けた視界が好きで、町並みの整い方を上から想像できるのが楽しいポイント。海風が強い日もあるので、羽織れる上着があると安心です。

萩焼の窯元

萩城下町周辺には多くの萩焼の窯元が点在しています。萩焼は素朴で温かみのある焼き物で、萩藩の御用窯として栄えました。訪問者は伝統的な技術を間近で見学でき、体験も可能です。

萩焼は、同じ器でも釉薬の表情が少しずつ違い、手に取ったときにすっと馴染む感じが魅力です。お土産として選ぶなら、旅の記念に「眺める器」より「使う器」を選ぶのがおすすめ。家に帰ってから湯呑みでお茶を淹れた瞬間に、城下町の静けさがふっと戻ってくる——そんな残り方をしてくれるのが萩焼だと思います。

萩博物館

城下町の歴史や文化を学べる施設で、展示品を通じて萩藩の成り立ちや暮らしぶりを知ることができます。

散策の前後に萩博物館を挟むと、町の見え方が一段変わります。先に立ち寄れば「ここは武家地」「この通りは町人地」といった視点が持てますし、散策の後なら「さっき見た土塀はこういう背景があるのか」と答え合わせができます。私のおすすめは、最初にざっと概要だけ押さえて、細部は歩いた後にじっくり見る流れ。歩いて感じた疑問が、展示で自然に解けていきます。

イベントと文化

萩城下町では、毎年様々な歴史や文化に関連したイベントが開催されます。「萩・椿まつり」や「萩時代まつり」など、季節ごとの催しは観光客に人気です。また、幕末の歴史に関心のある人にとって、ガイド付きツアーや散策マップを活用して巡る体験は特別な思い出となります。

イベントがある日はもちろん賑やかですが、城下町の良さは「何もない日」にも発揮されます。たとえば朝の時間帯は、人の流れが少なく、土塀の影が長く伸びていく様子がいちばん絵になる。私がもし日程を組むなら、午前中に城下町を歩き、午後にカフェや窯元でゆっくり、という配分にします。急がない旅程ほど、萩は応えてくれる気がします。

散策モデルコース

初めての人向けに、歩きやすいモデルコースをひとつ挙げるなら、「萩博物館→菊屋横丁→町人地区の路地散策→武家屋敷エリア(誕生地・旧宅)→指月公園」という流れが王道です。寄り道の量にもよりますが、ゆっくり歩いて2〜3時間ほど。途中で気になる路地に入ったり、写真を撮ったりしながら、自分のペースで組み立ててみてください。

歩くときのコツは、地図を握りしめすぎないこと。碁盤の目状の町並みなので、迷っても大きく外れることは少なく、むしろ迷いかけた瞬間にこそ「いい路地」に出会えます。私が城下町でよくやるのは、「土塀が続く道を見つけたら、しばらく同じ方向に歩いてみる」こと。景観の連続性が気持ちよく、萩らしさを深く味わえます。

アクセス情報

萩城下町へのアクセスは、公共交通機関と車のいずれでも便利です。JR新山口駅からバスで約60分の距離に位置し、車の場合は中国自動車道や山陽自動車道を利用してアクセスできます。

公共交通で訪れる場合は、到着時間を少し早めに設定しておくと安心です。城下町は徒歩で楽しむエリアなので、歩きやすい靴がいちばん大事。雨の日は石畳や路地が滑りやすいこともあるため、天候に合わせて足元を整えるだけで満足度が変わります。車の場合も、町並みの中心部は散策優先で、駐車後は歩いて回るのがおすすめです。

まとめ

萩城下町は、単なる観光地ではなく、日本の歴史や文化が生き続ける場所です。その街並みは時代を超えて私たちに感動を与えます。幕末維新の志士たちが駆け抜けたこの地を訪れれば、当時の日本の激動の時代を肌で感じることができるでしょう。伝統と自然、そして歴史が調和したこの町は、訪れる人々を魅了してやみません。

そしてもうひとつ。萩の魅力は「見どころを制覇したかどうか」では測れません。土塀の白さに目を奪われた瞬間、ふいに海風が抜けた瞬間、静かな路地で足音がやけに響いた瞬間——そういう小さな手触りが、旅の記憶として強く残ります。歴史を学ぶ人にも、ただ良い景色に浸りたい人にも、萩城下町はきっとちょうどいい余白をくれるはずです。

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